1. 歴史的な普及とデファクト標準
- 1990〜2000 年代初頭に MySQL は LAMP スタック(Linux + Apache + MySQL + PHP)の中核 として急速に普及。
- WordPress・Drupal など主要 CMS が最初から MySQL を採用し、「ウェブ=MySQL」という構図が定着。
- 結果としてレンタルサーバー業界は 需要のほぼ 100% を MySQL だけで賄える 状態に。
2. 技術・運用面のハードル
観点 | MySQL | PostgreSQL |
---|---|---|
内部構造 | シングルプロセス+マルチスレッド で軽量 | マルチプロセス でメモリ消費が大きめ |
管理ツール | phpMyAdmin など豊富。パネル統合も容易 | phpPgAdmin など選択肢が少ない |
初心者向け情報 | 書籍・Web 記事・Q&A が圧倒的に多い | 上級者向けの解説は多いが初学者向けが少ない |
ポイント
共有サーバーはメモリを多数ユーザーで共用するため、軽量で大量接続に強い MySQL の方が運用が安定しやすい。
3. 顧客層とアプリケーション需要の違い
- 共用レンタルサーバー利用者の主目的は WordPress・EC パッケージ など「MySQL 前提アプリ」。
- PostgreSQL を必要とする層(GIS、分析系、独自アプリ開発者など)は VPS /クラウドで自前インストール するケースが多い。
- そのため「PostgreSQL を用意しても利用率が上がらず、サポートコストだけが増える」というジレンマ。
4. コストとサポート体制
- DB エンジンを二つ走らせると サーバーリソース・脆弱性パッチ・バックアップ手順 がほぼ倍増。
- サポートスタッフ全員に PostgreSQL の深い知識を求めるのは負担が大きく、費用対効果が合わない。
- 初心者が「WordPress を Postgres で動かしたい」と誤解しないよう、あえて提供しない会社も多い。
5. 最近の動向
- 開発者コミュニティでは PostgreSQL の人気が上昇。クラウド型マネージド DB や高性能プランでは対応が増加。
- とはいえ共有レンタルサーバーのメイン顧客は依然として「WordPress 利用者」。業界全体では MySQL 優位が続くと考えられる。
まとめ
レンタルサーバーが MySQL を標準装備し、PostgreSQL 対応が限定的なのは 歴史的シェア・運用コスト・ユーザー需要・サポート体制 すべてが MySQL に有利だからです。PostgreSQL を本格利用したい場合は、VPS やクラウドで自由に構築するのが現状では最も合理的な選択肢と言えるでしょう。