Zabbix 7.0 LTS 新機能まとめ

~ エンタープライズ監視環境の高可用性・高速化を実現 ~

2024年6月4日にリリースされた Zabbix 7.0 LTS は、長期サポート版として約2年半ぶりの大規模アップデートを実現しました。今回のバージョンでは、監視環境の拡大、負荷分散、高速なデータ収集、セキュリティ強化など、エンタープライズ向けの実用性を大幅に向上させる多数の新機能と改善点が盛り込まれています。


1. Zabbix Proxy の強化とロードバランシング

  • プロキシグループによる高可用性・負荷分散
    複数の Zabbix Proxy を同一のプロキシグループに所属させることで、各 Proxy 間で監視対象ホストを自動的に再割り当てし、障害発生時にも監視を継続可能にします。これにより、運用負荷の分散とシステム全体の信頼性が向上します。
  • プロキシのメモリバッファ機能
    従来はヒストリデータのディスク書き込みが必須でしたが、今回のバージョンでは ProxyBufferMode により、メモリ、ディスク、ハイブリッドの3種類から選択可能な方式でデータ送信が行えるようになり、パフォーマンスが向上しています。

2. 非同期ポーラープロセスによるデータ収集の高速化

  • 非同期処理の導入
    従来の同期的なデータ収集から脱却し、各ポーラープロセスが次のチェックを待機せずに実行できるようになりました。これにより、エージェント、SNMP、HTTPチェックなどの監視項目の高速な取得が実現されています。
  • 最大同時チェック数の設定
    新たに導入された MaxConcurrentChecksPerPoller パラメータ(最大1,000件まで設定可能)により、1プロセスあたりのリクエスト件数を効率的に制御でき、システム全体のパフォーマンスが劇的に向上しました。

3. データストリーム機能の正式実装

  • リアルタイムデータ連携
    以前のバージョンで試験的に導入されていたデータストリーム機能が正式化され、取得したアイテム値やイベントデータを HTTP 経由で外部システムへリアルタイムに送信可能になりました。また、Apache Kafka への連携用コネクタも提供され、データパイプラインの構築が容易となっています。

4. ブラウザ監視機能の追加

  • 動的Web監視の実現
    新たに「ブラウザ」アイテムタイプが追加され、Selenium と WebDriver を利用して、JavaScript の実行やユーザー操作のシミュレーションを含む動的な Web ページの監視が可能になりました。これにより、従来の単純な URL チェックでは把握できなかったWebアプリケーションのパフォーマンスや挙動も詳細に監視できます。

5. セキュリティとフロントエンドの機能向上

  • 多要素認証(MFA)の導入
    フロントエンドへのログイン時に、TOTP(時間ベースワンタイムパスワード)や Duo 認証を用いた多要素認証が利用可能となり、セキュリティ面が大幅に強化されました。
  • 新たなダッシュボードウィジェット
    ゲージ、円グラフ、ハニカム形式などのウィジェットが追加され、監視結果の可視化がより直感的かつ柔軟に行えるようになりました。

6. その他の改善点

  • 内部プロセスとエージェント通信の改善
    Zabbix Agent と Agent2 のプロトコル統合、JSON ベースの新通信プロトコルの採用により、エージェント間の通信が高速かつ堅牢になりました。
  • 監査ログおよびデータベースの最適化
    監査ログのハイパーテーブル移行や Oracle DB サポートの非推奨化など、バックエンドのデータ管理体制も刷新され、運用効率が向上しています。
  • ライセンス変更
    Zabbix 7.0 以降は AGPLv3 ライセンスに変更され、特に SaaS などのネットワーク提供における利用条件が厳格化されています。

まとめ

Zabbix 7.0 LTS は、プロキシの高可用性や負荷分散、非同期処理による高速なデータ収集、リアルタイムデータストリーム、ブラウザ監視、多要素認証など、エンタープライズ環境における監視の信頼性と効率性を大幅に向上させる革新的なアップデートが実現されています。これらの新機能により、規模の大きな監視環境や、セキュリティ、パフォーマンスの要求が厳しいシステムにおいて、より柔軟で実用的な監視基盤の構築が可能となります。

ぜひ、Zabbix 7.0 LTS の導入を検討し、最新の監視環境で運用効率と信頼性の向上を実現してください。

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