この記事では、ESXi上で稼働していたWindows 10 Proの仮想マシン「TestServer」を、Proxmox VEへ移行する手順を紹介します。移行作業中は、各工程での設定ミスやトラブルを防ぐため、事前に十分なバックアップを取得し、テスト環境で確認することを推奨します。
1. 事前準備
- バックアップの取得
移行対象のゲストOSおよび重要データの完全バックアップを実施します。 - ESXi側の準備
- SSHサービスを有効化し、必要な認証情報を用意します。
- OVF/OVA形式でのエクスポートが可能な状態か確認してください。
- ドライバ整理
- Windowsの場合、ESXi環境専用のVMware Tools(またはopen-vm-tools)は移行前または移行直後に削除します。
- 移行後、Proxmox用のVirtIOドライバ(ディスク、ネットワーク、バルーニング用)を導入する準備を行います。
2. ESXiからのエクスポート
- OVF/OVA形式でエクスポート
- OVFファイル(例: TestServer.ovf)とマニフェストファイル(例: TestServer.mf)をエクスポートします。
- これらのファイルは、後でゲストOSのハードウェア構成を参照するための資料として利用します。
- VMDKファイルの取得
- 実際のディスクイメージとして、TestServer.vmdk(ディスクリプタファイル)とTestServer-flat.vmdk(実データ)が生成されます。
- VMDKファイルは大容量の場合があるため、ESXiからProxmoxへはNFS経由やscpなどを利用して直接転送します。
3. Proxmox VEへの準備
- VMDKファイルの配置
転送したVMDKファイルをProxmoxホスト上の一時ディレクトリ(例:/root
)に配置し、整合性チェック(md5sumやsha256sum)を実施します。
4. 新規VMの作成とディスクのインポート
- 新規VMの作成
- Proxmox Web UIの「Create VM」機能で、新たに仮想マシン「TestServer」を作成します。
- VMID(例: 101)、名前、CPU、メモリ、ネットワーク(例:virtioネットワーク、vmbr0ブリッジ)などを設定します。
- 初期ディスクは作成せず、後からインポートするか、仮のディスクで設定しておきます。
- VMDKファイルのインポート
ProxmoxのCLIから、以下のコマンドを実行し、VMDKファイルをストレージ(例:local-lvm)にインポートします。qm importdisk 101 /root/TestServer.vmdk local-lvm
これにより、VMDKファイルがProxmoxのストレージに変換され、設定上は「unused0」として登録されます。 - ディスクのアタッチ
インポート後、ディスクを適切なコントローラー(例:VirtIO SCSI)に割り当てます。qm set 101 --scsi0 local-lvm:vm-101-disk-0
- ブートオーダーの設定
仮想マシンのブート順序を、ディスク(scsi0)から起動するように変更します。qm set 101 --boot order='scsi0;net0'
5. ゲストOS内のドライバ調整(Windows 10 Proの場合)
- VMware Toolsの削除
- 移行前または移行直後に、ESXi専用のVMware Tools(open-vm-tools)を削除しておきます。
- VirtIOドライバの導入
- Proxmox提供のvirtio-win.isoをゲストOSにマウントし、以下のドライバをインストールします。
- VirtIO SCSI(ディスク用)
- VirtIOネットワーク(NIC用)
- VirtIO Balloon(バルーニング用)
- Proxmox提供のvirtio-win.isoをゲストOSにマウントし、以下のドライバをインストールします。
- QEMU Guest Agentの導入
- Proxmoxとの連携(シャットダウン、IP情報取得、スナップショットの一貫性確保など)を強化するため、qemu-guest-agentをインストールし、サービスを有効化します。
6. VMの起動と検証
- 起動:
以下のコマンドでTestServerを起動します。qm start 101
- コンソール確認:
Proxmox Web UIの「Console」タブから、ゲストOSが正しくブートし、ネットワークや各デバイスが正常に認識されているか確認します。 - ログの確認:
起動時のエラーや警告がないか、システムログを確認します。
7. 最終調整
- 設定の最終確認:
VMの設定が意図通り反映され、不要な仮のディスクや設定がないかを再度確認します。 - 運用準備:
ゲストOSが安定稼働していることを確認後、運用環境として正式に切り替えます。
この手順により、ESXiからProxmox VEへのWindows 10 Pro(TestServer)の移行が可能になります。各工程での詳細な設定やトラブルシューティングは、環境や個別の要件に合わせて適宜対応してください。