支店ネットワークをクラウドで一括管理する ― SASE/SSE と SD‑WAN の基本と実践

クラウド上のゲートウェイを経由して支店をインターネットにつなぐ仕組みは、SASE(サッシー)/SSE と呼ばれます。これは「ネットワーク(SD‑WAN)」と「セキュリティ(SWG、CASB など)」をまるごとクラウドサービスとして提供し、拠点数が多くても一つの画面で運用できるのが特徴です。支店は手元の回線に小型ルータを挿すだけで、トラフィックが自動的にクラウドへ送られ、ポリシーが統一されます。以下では難しい用語をできるだけ避けながら、メリット・デメリット、導入の流れを簡潔に整理します。


SASE/SSE と SD‑WAN を一言で

  • SASE は「ネットワーク機能(SD‑WAN)とセキュリティ機能をセットにしたクラウドサービス」
  • SSE はその中のセキュリティ機能だけを単体で提供する形
  • SD‑WAN は支店同士やクラウドまでの経路を最適化し、運用を一括管理できるネットワーク技術
  • SWG(セキュア Web ゲートウェイ) は Web 通信を監視・フィルタしてマルウェアを防ぐ中心機能

メリット

  1. セキュリティの一元化
    ばらばらだった URL フィルタ、ファイアウォール、ゼロトラスト認証を PoP(クラウド拠点)側でまとめて実施できる。
  2. 運用負荷の軽減
    SD‑WAN ルータはゼロタッチで設定が自動投入され、現地の作業は基本的にコンセントに挿すだけで済む。
  3. 通信コストと遅延の最適化
    各支店が直接クラウドへ出られるため、本社に回線を集約する昔の方式より回線費用と遅延を下げやすい。
  4. 回線の手配も委託できる
    Aryaka などはローカル回線の手続きをまるごと代行し、障害対応も一本化できる。

デメリット/注意点

  • ベンダーロックイン
    PoP や運用ポータルは専用のため、あとで別サービスに切り替えるとき移行負荷が大きい。
  • ラストマイルの故障リスク
    支店回線が切れると PoP へ行けない。冗長回線や LTE/5G バックアップで補う設計が必要。
  • 学習コスト
    従来のオンプレ機器と違い、クラウド側の概念(PoP、トンネル、ID 連携)を理解する時間がかかる。

導入のざっくり手順

  1. 現状棚卸し
    既存回線やアプリ要件を洗い出す。
  2. サービス選定
    PoP の場所、料金、機能を比較(例:Cloudflare One、Zscaler、Cato など)。
  3. 回線方針決定
    自社で ISP と契約するか、MSP に丸ごと任せるかを決める。
  4. ルータ設置
    小型 SD‑WAN ルータを各支店へ配送し、電源を入れてゼロタッチ登録。
  5. トンネル確立
    ルータが PoP へ IPsec などの暗号トンネルを自動で張り、全トラフィックをクラウドへ転送。
  6. ポリシー適用 & 段階移行
    本社 → パイロット支店 → 全拠点の順で切り替え、ログを確認しながら調整。

まとめ

  • SASE/SSE は「ネットワークとセキュリティをクラウドに任せ、支店は回線とルータだけ」というシンプルな考え方。
  • セキュリティの統一、運用負荷・通信コスト削減が大きな利点だが、ベンダーロックとラストマイル設計には注意が必要。
  • 手順は「調査→サービス・回線選定→ゼロタッチ導入→段階移行」の 4 ステップで覚えると分かりやすい。

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